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「苦しむ人々の心のために」二人の彫師の想い。

白根仏壇の歴史は、江戸時代中期に伽藍師という寺院専門の宮大工・長井林右エ門が京都から仏壇製造技術を導入したのがはじまりと伝えられています。洪水の多い土地であり、親鸞聖人や日蓮聖人のゆかりの地であったことから厚い信仰心が育まれ、仏壇生産地となっていきました。

白根仏壇は時代と共に分業化が進み、技術的・芸術的に大きく進歩していきました。初代彫師となった長谷川吉蔵は文化13年(1816)生まれ。後に越後で多くの作品を彫りあげた石川雲蝶は文化11年(1814)に江戸雑司ヶ谷で生まれています。二人の幼少期から青年期にかけて、江戸では文化・文政の町人文化が花開いていた時期。しかし越後平野では信濃川の氾濫で困窮が続き、人々の心の拠り所は仏教という時代でした。

石川雲蝶は若い頃から仏壇を作りながら彫工の技を磨き、20代半ばには江戸彫石川流の技術を修得し、幕府御用勤の彫師となりました。本成寺の招きで三条に来たのは29歳の頃だと思われます。このとき雲蝶はすでに高名な彫師で、仕事を見物に多くの人が集まったと言われています。雲蝶と吉蔵が出会ったという記録はありませんが、吉蔵が訪ねて行った可能性は大いにあります。少なくとも作品は見たであろうと推察できます。

その後、雲蝶は三条の酒井家の婿養子となります。経済的に豊かな江戸を捨てた決意の裏にはどんな想いがあったのでしょう。また、そんな雲蝶の動静をおそらく耳にしたであろう吉蔵は何を思ったのでしょう。白根仏壇初代彫師としての想いをさらに熱くしたのではないでしょうか。二人の彫師に共通するものは、「苦しむ人々の心の拠り所になるものを。生きる力になるものを」という想いだったに違いありません。

越後のミケランジェロ

長谷川吉蔵の「技とこころ」を受け継いだ
その弟子・吉田竹市たち。

初代の後を継いだ二代目 長谷川吉蔵は村上堆朱の彫師に師事し、さらなる技法と芸術性を追求しました。二代目彫師という看板を背負いながらも他の工芸分野に弟子入りすることには、相当な覚悟があったと思われます。三代目の長谷川春平は明治三十年頃に新潟市へ移住し、4人もの弟子を育てあげました。その一人が、吉運堂の創業者となる吉田竹市です。

竹市は尋常小学校卒業後、長谷川春平に奉公し、約10年間仏壇づくりを学んだ後、大正13年に独立開業。実家の軒先を借りて店を構えました。店の名は、姓の「吉田」と屋号の「運平」から1文字ずつとって「吉運堂」としました。旧白根市だけでなく、新潟市や燕市などからも仕事の依頼が次々と舞い込み、弟子も3人ほどいましたが、やがて太平洋戦争が勃発。人々の暮らしは苦しくなり、仏壇の需要も激減。そのうえ弟子たちが次々と軍に招集されました。竹市も軍需工場に配属され、仏壇店は事実上の休業状態となりました。

戦後も人々の暮らしは厳しく、仏壇を買う余裕のある家はありません。そこで竹市は葬祭具も手掛けはじめます。仏壇とは別分野ですが、祭壇などに施される装飾に共通するものがあったからです。さらに木の扉や窓枠などの建具にも手を広げました。これは店の経営を維持するためでもありましたが、「白根仏壇三百年の『技とこころ』の継承を途切れさせないよう、廃業だけはするまい」という強い想いからでした。

そんな折、竹市に願ってもない機会が訪れます。新潟市東区岡山の超倫寺の現住職の祖父・菅原法賢師が、「仏壇の彫師だが、腕のいい職人がいる」という噂を耳にし、竹市に「本堂の御讃卓と欄間の仕事を任せよう」と言ってくださったのです。竹市はこの大仕事に自分の持てるもの全てを注ぎ込みました。「地域の人々の心の支えになるものを。さらにこの先の未来を生きる人々の心にも届くものを」と・・・。

この仕事をご縁として、超倫寺と吉運堂のつながりはその後4代に渡って続いています。

先人たちの作品から、
活き活きとしたチカラをいただくために、
お寺に行く機会を増やしてはいかがでしょう。

かつての彫師たちは、自らの命を捧げるかの如く作品に打ち込みました。石川雲蝶しかり、長谷川吉蔵しかり、その弟子・吉田竹市たちも・・・。度重なる洪水。開拓しても開拓しても水に沈む土地。苦しみ多い時代だったからこそ、心の底から人々を救いたいという想いが生まれ、彫師たちの作品に力強い生命を吹き込みました。時代を経た今でも、残された作品には当時と変わらない力が宿っています。それは彫師たちが、現代を生きる私たちにも届くよう魂を込めたからなのです。

越後新潟は、親鸞聖人や日蓮聖人ゆかりの地でもあり、古くから庶民に仏教文化と厚い信仰が根付いた地。多くのお寺に彫師たちのすばらしい作品が残っています。ぜひ、お近くのお寺に足を運び、先人たちから「生きた力・生きる力」を受け取ってください。

吉運堂
吉運堂特設_系図 吉運堂特設_超倫寺

超倫寺様(新潟市東区岡山)

吉運堂